書簡の柩/蒸発王
花びらだけは
黒い箱に入れて
目に見えない所に隠していた
それから何年かたった
春
彼女の名前で封書が届いた
見るとそれは彼女の弟からのもので
彼女の死を知らせるものだった
彼女は病で
体の筋肉が徐々に死んでいく病で
それは最初に
指先に発祥したらしい
しかし其れを私には伝えるな と
弟に釘を刺したそうだ
彼女は震える手で最後の手紙を書いて
いつものように花びらを入れて
この手紙が届くときは
私が居なくなった時です
と弟に手紙を託した
彼女の最後の手紙には
病のことなど書いて無かった
がくがくした
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