書簡の柩/蒸発王
 
似事に
自分の国の花を一輪贈って見たが
どうにも照れくさく
それっきりだった


 仕様の無い人ね

と年に何回目かの逢瀬の時に
彼女は笑った



20年
私たちはそうした関係だった


長すぎた春によって
彼女への思いが
恋か愛か見分けの着かない
情に煮込まれ
結局お互いに結婚もせず
海をへだてて
こんな遠距離の恋文だけを交わすのみだった

そして20年がたった頃
彼女からの便りが途切れた

住所を尋ねても別の家が建っていて

まるで
煙のように彼女は消えて
彼女の手紙達はそのショックで
全て燃やしてしまったが

沢山の花び
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