書簡の柩/蒸発王
似事に
自分の国の花を一輪贈って見たが
どうにも照れくさく
それっきりだった
仕様の無い人ね
と年に何回目かの逢瀬の時に
彼女は笑った
20年
私たちはそうした関係だった
長すぎた春によって
彼女への思いが
恋か愛か見分けの着かない
情に煮込まれ
結局お互いに結婚もせず
海をへだてて
こんな遠距離の恋文だけを交わすのみだった
そして20年がたった頃
彼女からの便りが途切れた
住所を尋ねても別の家が建っていて
まるで
煙のように彼女は消えて
彼女の手紙達はそのショックで
全て燃やしてしまったが
沢山の花び
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)