それから俺は3分ほど何も考えなかった/ホロウ・シカエルボク
 
誌が入ったポストが集合住宅の様に並べてある、俺はそれをひとつずつ手に取って確かめていく、出来れば明日にでももうひとつ仕事にあり付けたい、それなりに納得づくで自尊心をどぶに捨てることが出来るような仕事、俺に出来ることなんてそんなにはない、贅沢は言えないが闇雲には動きたくない…歳をとればそういったことはもう少しうまく出来るものだと長いこと考えていたけれど、俺はいつの間にかそれが希望的観測に過ぎないものだったということに気づかざるを得ないほどに長く深く年輪を増やしていたのだ、何処にも根付けないまま古木になってしまった、末端の細い枝はいつも軋むような音を立てている、仕事のある場所を探して移動しているうちに
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