紫苑/柊 恵
 
けど


いつも来てくださる賀来さま
偉い お役人様なんだって
気難しくて、とても堅い人

はじめは、あたしの身体を気に入ってくれたけど
ある日、歌を詠んでくれて
返歌したら、すごく喜んでくれた

それからは逢うたびに歌のやり取りをした
賀来様の歌は、とても素敵だったけど、
いつも孤独が香った
そんな時、あたしは賀来さまを抱きしめた
好きかも知れないと思った

ある日、賀来さまは配下のお侍様を連れていらして
宴を催してくださった
篤之進さまは、その中のお一人で、ものすごく頭の回転が速かった
心の機微を見抜く方だった
馬鹿だったなぁ…
あたしは篤之進さまと
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