夜霧のパピヨン ★/atsuchan69
酔わなきゃ」と、鼻を押さえて
男の胸から取りだされた白いハンカチを受けとった
「私、棄てられたの!」
――途端、キャンキャン吼えて泣いた
青髭はすまなさそうに店内を見回し、女の背中を擦った
パピヨン(♀犬)はカウンターに顔を埋めたが、
困ったという顔の青髭は、なぜか私と眼と眼があって
眉を下げたまま「梃子摺らせやがる」と、さも言いたげだった
左手でロメオ・Y・ジュリエッタを硝子の灰皿でつぶし、
「ご迷惑では?」と、俺に訊いた。
「お気を遣わずに。こちらも、関係なく一人で飲みます」
すると、パピヨン(♀犬)がとつぜん上体を起こした
「そうよ、私だって飲むわ!」
涙で溶け
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