アルス・コンビナトリア:結合術 (部分)/がらんどう
 
っているのだ。それを人魚だと言っているのは私だけではないか。ではこれは何だ。ニセモノだって? ニセモノだとすれば何のニセモノだというのだ。ニセモノがあるというのならばホンモノがあるのだろう。あるのか? それは何のホンモノなのだ? いや、いい、これは人魚だ、ホンモノだろうがニセモノだろうが、これは人魚だ。そういうことにしておかないと話が少しも進まない。続けよう。

ここがオランダであるにしろないにしろ、かつてオランダには人魚がいた。私は知っている。アルベルト・セバという男の「驚異の部屋」。そこにあった。それもまた死んだ人魚だ。こいつと同じような。もしかしたら、こいつ自身かもしれない。つまり、こい
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