折り返しのある男/atsuchan69
、ぶちマイナーな店かもしらんね」そこで男の妻は、運転手さんへ提案した。「だで、順番をかえてスガキヤへ行って百円ショップへ行こまい。今日は運転手さんのスガキヤ・デビューということで・・・・ウチらが御馳走させていただきますだわ」そう言いながらも男の妻は、坂道を下るタクシーの後部座席でソニア・リキエルの紅いリップを唇に塗ろうとしている。「すまにゃー、ほんでも次の仕事が入っとるもんでいけにゃーだわ」運転手さんは体よく誘いを断ったが、「残念だてね、また行こまい」薄いピンク色のコートを着た妻は、すでに発した言葉など、もうどうでもよいという顔でリップを塗った。
三月というと、月の前半と後半の季候が大きく
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