折り返しのある男/atsuchan69
 
え誂えなくなっていた。老舗のブランドだってどうでもよい。良いものは良いのだが、悪くても安ければ納得する。良くて安ければ尚、いうことなしだ。今では、アクアスキュータムのコートを着たまま餃子の王将で堂々と餃子三人前を食べることができる。それも真っ昼間から、たった一人で餃子三人前と生ビールを注文する。また妻と回転寿司へゆき、恥ずかしげもなく大声で欲しいネタを注文することができる。会社帰りに立ち寄ったセブン‐イレブンの店先で、おでんを立ったまま食べながらカップ酒を呑むことができる、若いころにはとても出来なかった「あんなこと」や「こんなこと」が今では素面の顔でできる人間になってしまっていた。
 
 まも
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