折り返しのある男/atsuchan69
 
まもなく勾配のきつい坂道をタクシーが登ってきた。裏庭のデッキから見下ろすと、ほったらかしのカルーナや、葉を落としたハナミズキのある小さな庭が、いくぶん荒れているふうな感じがした。ついこのあいだ燃やした落ち葉のあたりが黒く湿っている。そうしてふたり、コンクリートの階段を下りて裏門へ出た。ガレージの前に停まったタクシーにそそくさと乗り込むと、運転手さんが「やっとかめだわ。今日はどちらへ行きゃーすかなも?」と、毎度感じるハイテンションな口調で尋ねた。そのとき、男はとりあえず「――駅まで」と言おうとしたが、直接「目的地ちかく」まで連れて行ってもらってもよいのかも知れない・・・・と、思案をした。すると、その
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