二千九年、LOVE/捨て彦
 
である。今回も如何いう小さな考えを彼女は秘めているのだろうか。
伊藤はそう考えて多少辟易し現実逃避から戻ッたのだが、其処で又気づいた事があッた。先ほどから足首に何か生暖かい温度を感じる。其れは人のつま先だッだ。つま先が、伊藤の足首にぴッたりと寄り添ッている。伊藤がTableの肴に眼を移すと小山の顔が視界に入ッた。矢張り先ほどと同じ様に小山は此方を見ていた。酒気を程好く含み脱力した振舞い。離れる事の無い温度を伝えるTableの下のつま先。伊藤は考え込んでいた所に思いがけない事態を受け心を動揺に晒す。其れを隠そうとゆッくりとナンシイの前にあるサキイカに手をやるが、伊藤自身は普段は動揺と云うものにはあ
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