二千九年、LOVE/捨て彦
 
気のあまり無い赤い顔を向けて芙蓉が云う。
「済みません。結構好きキライが分れる所だと思ッたので、芙蓉さんに紹介するのを躊躇ッていたんです。私は大好きなお店なんですが」
「アラ。貴女、アタシに遠慮なんかしていたノ?失礼しちゃうワ」
「イエイエ、そういう分けでは無いんですケド…。…デモ、そういう芙蓉さんだッて、こんな楽しい会合がある事、今まで私にチットモ教えてくれなかッたぢゃ無いですカ」
「エー、マァ…。そうなんだけれど…」
此の二人の会話を、飲酒しながら聞くとも無く聞いていた伊藤とナンシイ。其其別の姿勢だッたものの、教えてくれなかッた、という小山の言葉を聞いて今日の最初の自身らのやり取りを
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