二千九年、LOVE/捨て彦
ェ」と伊藤。
こういう場面で、芙蓉は何時も甲斐甲斐しく他人の世話をする。此れは彼女生来の気質がそうさせる様で、その姿はとても慈悲深く恐らくは彼女の生き方を顕著に表している場面でもある。伊藤は缶ビイルを飲みながらナンシイと小山が話しているのを尻目に其の所作を眺める。
橋田の私物を鞄に入れる仕草や丁寧に服を畳む仕草、其の一つ一つは見ていて飽きない。寧ろ穏やかな気分になると云うのは、以前の伊藤の境遇では考えられない事であり、それだけ現在の伊藤自身、心身に余裕があると云う事なのであろう。
芙蓉が橋田の肩を助けて立ち上がッた時、橋田が思いの外フラ付いていた為、其処で改めて泥酔している事に気づく。
「
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)