二千九年、LOVE/捨て彦
 
矢張り彼女が芙蓉と同じ様なサバけた心底の持ち主だッたからに他ならない。
丑三ツ時も過ぎた頃には皆程好い風に酔ッた。伊藤も今日は久々に酔ッた。ナンシイの目は終始半開きの赤ら顔であッて、橋田はときおり舟を扱ぐ仕草。其の姿を見た芙蓉が「橋田さん大丈夫?」と橋田の肩を触りながら話かけるが、橋田はボウッとした顔面を上げて芙蓉に向かッて首をたてに振るのみ、
「アァ、橋田がそうなッたら、そろそろ眠たい時間だヨ」
ナンシイがGlassを持ッた手で橋田を指差す。芙蓉は橋田の顔を覗き込み額に手を当てる、何時の間にか床に落ちてしまッた橋田のCoatを拾ッてやる。
「奥に寝かせた方が好いかしら」
「そうだねェ」
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