恋花(コイバナ)/渡 ひろこ
棘草=いらくさ}を握っている
棘が柔らかな皮膚に食い込もうとも
居酒屋のテーブルに
藍色とマゼンダのため息が
マーブル状に注がれる
それぞれ噛まれた痕を曝しながら
躊躇なく発色し続け
やがてテーブルからあふれて
わたしの手の甲にポタポタ落ち出した
あまりにも頑なに握りしめる棘草
もうすでに棘を刺して血を滲ませている
「痛いでしょう?」
そっと手のひらに包んで
華奢な指を一本一本ほどいてあげようとしても
ますます力をこめて離さない
カノジョたちのため息と想いが流れ出て
辺り一面にどんどん浸水していく
上がってい
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