恋花(コイバナ)/渡 ひろこ
 
ていく水位


踝、胸、ああ、もう首まで浸かって

息、が、できない



居酒屋の喧騒の中
このテーブルだけひずんだ空間
反比例する眠れぬ夜を同時に見せられ
盲(めし)いた執着にむせかえる
カノジョたちはそれを
凄まじい勢いで消費していく



むしられた淡い花びらが
底のない闇に
沈んで
沈んで
沈んでいく



帰りの電車の中
カノジョたちの色で
ビッショリ濡れた身体が重い

車窓を流れる街の明かりに導かれて

囲いのある浮島へと
家路を急いだ




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