博士の愛した異常な数式/影山影司
崩壊しないのか? 外部から負荷をかけられないためか? いいや違う、頑丈な囲いに守られているからだ。綴じて纏められた書類が散らばらないように。私の研究はね、その世界の『外殻』とは何かを探すことなんだよ。新たな発電方法だとか、治療薬の開発だの、生命工学でこんな家を作ったりだのは、その余技に過ぎないんだ。あともう一年もすれば私は第一歩を歩み始めるだろう。つまり『我々以外の次元』への干渉および観測だ。隔絶された次元の中にある情報は、私の想像もつかない有益なものを齎すだろう、そしてそれらを繋ぎ合わせると、必ず私は外郭の正体へ辿り着くのだ。そう、まるで一枚一枚では意味を持たない資料が、綴じ纏められることで一つ
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