博士の愛した異常な数式/影山影司
一つの『答え』を出すのと同じだ。どう思う、忍君」
博士は目当てのものを見つけたらしく、話を収束させた。私は彼の言うことをこれっぽっちも理解しないまま「釈迦に説法、僭越ながら語らせてもらいます」と断って、傍らの机から読みかけの本を一冊とって、博士の机に投げた。ちょうど博士が押し広げた部分に行儀良く表を上面に着地した。
「こんな感じですね」
自分が読んでいた本を、サンドイッチの中身を盗み見るみたいにして一枚一枚捲ってみる。「一頁毎に莫大な情報があって、全てを繋げば一つの答えが出る」
博士は一拍、間を於いて「言いえて妙だな」と答えて本を私に投げて返した。
してやったり。
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