博士の愛した異常な数式/影山影司
 
物をしながら会話をする、私はこれが博士の一番の天才所だと思っている。

「最近の学説ではね、世界というのは何層もの次元が折り重なった塔のような状態となっている。層の一枚一枚は中に大量の情報を詰め込んでいて、次元一つにそれぞれ独立した世界があるのだ。
 己の存在するこの世界もまた、複数ある次元の一つに過ぎないのだ。」

 博士が「ドーン!」と叫んで博士は机の上に腕をたたきつけ、箒で掃くみたいに積みあがった紙の山を床に押し崩した。叩きつけられ折潰される紙、床の表面を滑ってあらぬ方向へ行く紙、抵抗で中空に舞いそのまま撫でるように落ちる紙。
「何故、積んだだけの塔である『世界』はこのように崩壊
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