修羅のひと/恋月 ぴの
 
射精を繰返した

今でも時おり膣奥から流れ出てきたものが下履きを汚し
死んでしまったはずのあのひとがお腹のなかで生き長らえている
そんな不可思議な感覚に捕われてしまう

経済事情なのか薄暗い通路で女の子の声がした
あの熊のぬいぐるみの持ち主
あのひとと美佐子さんとの鎹になるはずだった一粒だね
相思相愛だった記憶の証し

ひとり遊びに飽きたのだろう大声で母親を呼んでいる

男はもう願い下げだけど跡取り息子はどうしても欲しいの
だから男の子を孕んだのなら私宛に連絡してちょうだい

彼女はそう言い残すと病室の扉を閉じた

これも寒の戻りってことなのだろうか
首を竦め
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