死人(しびと・Emによるテンポ・ルバート)/ホロウ・シカエルボク
馬鹿馬鹿しいくらいに
俺はある路地のどん詰まりで小便を済ませる、ほこりひとつついていないマンホールのふたにそいつは流れ込んでいく、どこに行くのか―存在についてなにひとつ蓄積のないこの世界で―俺は四つん這いになり犬の様に小便に鼻を近づける、もしかしたら小便の臭いなどしないのではないかという興味に駆られて…やはりそれには臭いが無い、ミネラル・ウォーターよりも曖昧な感覚しかそこには残されていない…なめてみる、舌を長く出して―味がしない、小便の味などしない、アスファルトの味も、どこかからほこりのように積もるはずの土の味すらしない…ここは忌まわしいところなのだ、と俺は悟る、それは理屈じゃない、ある種の逸脱
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