夜額/木立 悟
冬の咽もとに指を寄せ
ふるえのかたちを描いてゆく
あなたは
あなたを描いてゆく
太い流れが細くなるとき
熱は流れに染みとおる
夜が夜を圧そうとするとき
熱は夜の辺をめくる
腹の前で 胸の前で
野卑はやわらかく抱きとめられる
庭も屋根も
待合室のように明るい
音のない鈴
笑みの波
抄いそこねる手を
許している
ひとつの明かりが
響いている
歯車を昇るむらさきを見る
喪失を湧水に明け渡す
光のとなり
扉は歩き
けだものの高み
吐く息は虹
飛べない鳥と霧の袖
水平も地平もないさかいめに
皆ぽつ
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