今ここにある危機/殿岡秀秋
本人がやりたいと言ったのよ」
「塾の先生の前では
子どもだっていい格好をしたいだろう
親のほうで抑えてあげなくては」
「多すぎると不満をいうから
わたしが半分にしてもらったわ」
「きつく叱るのがどうかと思うわ」
二人のやりとりを聞いて妻がいう
娘は返事をしないで
ソファーに座り
テレビをつけて
唇を指先でつつく
学歴などは
自転車の補助輪になるかもしれないが
大人になって人生の車輪を漕ぐのは
自分しかいない
親が叱れば叱るほど
子どもの生命力は削られ
心に空洞が生まれて
人に共感しにくくなる
とぼくはおもう
ぼくも頬を母に叩かれ
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