猜疑と激情は滝になれ!/竜門勇気
ある朝。小便をしようとしたら
便所が浮いていた。
昨晩まではきっと、ここにあったのに。
真っ青なお空の背景に、便所はゆらゆらたゆたっています。
どうして僕をおいて行ってしまったのかな。
僕は地面に張り付いたままだよ。
振り返ると、お母さんのつま先が頭の上を滑っていく。
慌てて部屋に戻ってもがらんとしていて、ああ、昨日までの
暮らしはまるでお祭りの夜のあの気持ちのようだな。
そうっと感じて、ふと消えてさみしい。
あの気持ちが、暮らしなのだな、と思いました。
見ると、おばあちゃんがぐうっと足を伸ばして、とぼとぼと
部屋の床に足音を撒き散らしています。
青白い足首に涙が
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