雁/杉菜 晃
に残る鈍痛にも気づかなかった。
宿舎前の真直ぐな道を折れるところで、振返ると、あの女子学生はまだ屈み込んでおり、その周りに仲間たちが立って、肩に手を置いたりしていた。
鳩尾が本格的に疼き出したのは、ケーブルカーから電車に乗換えてからだった。
けれども私は、それを彼女からのプレゼントのように受取っていた。
鈍痛は一週間ばかりつづいて、おさまった。
★
その後、幾度となく山の宿舎を訪れたが、彼女に出会うことはなく、年月を過ごしていった。
雁の渡りに出合いもしたが、あの人の最後の叫び、
「ごめんなさーい」
に重なってきてならなかった。
「
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