雁/杉菜 晃
 
、そんな仲間たちの動きから、冷静に戻ったらしかった。ふっと面を上げて、せつなく私を捉えたのだ。  
 その顔が、見る見る染まっていくのを、私は否が応でも観察せざるを得なかった。あまりのことゆえ、私には観察者の自由があったのだ。               
 その私の冷めた表情からも、彼女は自らの慌てぶりを察したらしかった。
「ごめんなさーい!」
 こう叫ぶなり、顔を両手で覆って、蹲ってしまったのだった。
 私は悪びれるように一言、訳の分からぬ言い訳をして、ボストンを手にするとケーブルカーの駅に向って行った。
 自分には不相応なばかり、美しい人だったなと呟きながら、鳩尾に残
[次のページ]
戻る   Point(4)