「no lapel badge or Ellie shows」/紫音
 
一日視姦されなければならない身を哲学に語るとき
死んだはずのマルクスが東大の図書館にぼぅっと蘇える
どうやら資本主義が溶解しているらしいから共産主義の妖怪の時間なのかもしれない
欲しい物なんて無いのだけど何かを買わないと落ち着かないからカメラを買ってみた
手で囲った世界はすぐに消えてしまうからもう一度世界を切り取るために
切り取られた白縁の其れはもう二度と見ることも無いのだけれど
自分が誰か何かを考えるよりも余程輪郭を確かめさせてくれる
写るのは何も無い空であり誰もいない廃墟であり煩わしい生が無い
哀しくも素敵な数瞬の後にも無くなってしまうだろう世界

インク切れのプリンターが
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