再びうたう!/生田 稔
 
京を出でバスに揺らるる車窓より何とはなくも流れゆく景

我らには旅があれどもこのバスを動かす者はただ労と金

うすぐもり篠という場所過ぎゆきつ遠景の山そして山

世は淋し徒歩に旅せし贅沢を失いてなお足ることもなし

一人座し一人に思い独りしてこれまで生きしことを思いて

歌うたう人となりて五十年あさましきかな歌材さがすを

ポカポカと午後の陽のさす車路橋爪という街を過ぎゆく

川流れ山つらなりて光さす野は広やかに開けいて

整地さる畑地は常に目に入れど久しくは見ず手植えなる田を

全くの山々つづきたる坂道を蛇行するバス談笑の中

蟹と菜を食らいて満腹立ち上が
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