毬藻/黒田康之
 
して複数の結節で出来た腹の、生殖器の根元に近い下部からその結節を段々に波打たせ、生臭い溜息を深く吐いた。
 すると彼は苦笑しながら、その二葉の写真をブリーフケースにしまいこんだ。ブリーフケースの中は写真でいっぱいになっていた。私は深く息をするたびに毛穴からにじみ出る大量の粘液に苦慮しながら、さらに複眼の焦点を明確にした。
「今日は、先生は不調なのでしょう。私は狂気なのではなくて、この私の発見が生み出した混乱をわかっていただきたかったのです」
 かれはそう言うと立ち上がって、濃いグレーのネクタイを軽く直して、黒いブリーフケースを手にした。
「また、今度参ります」
 そういうと、彼は深くお辞
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