毬藻/黒田康之
 
。その現実は自覚できる現実の似像であることも多いが、時に人間とは思えない異形の生き物の展開する現実もある。今私がこうして語っているときに、私が通常の私に見えているとするならば、あなたと私が異形の異世界の現実と相互に通じていることを見落としているのかもしれないと。
 私は彼のことばが急に哲学めいていくことにもう一つの快感があった。ああパラレルワールド。ああ幻視者の現実の混乱と錯誤なのだと、私は彼が螺旋ということばを口にするたびに快楽を覚えた。人間の感覚などは、その根源は曖昧である。ゆえに幻視が起きる。ただ、幻視は無効なわけではない。トポロジーの学説など、空間に物体を幻視しなければ到底説き得ない学説
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