オーキュペテーとケライノー/木屋 亞万
っている」と彼は呟き、また黙り込む
私は何か正しい囁きを沈黙と発話の波間に、彼の耳元へ流し込んであげたいのだけれど
物質的な壁がそれを実現させる可能性すら奪う
私たちの間には強い風が吹いている
それはオーキュペテーの風力で、その力を借りてケライノーが立ちふさがる
しかし彼女たちの連携は何らかの意図を持って、クレタ島の彼の声だけを届けてくれる
(ケライノーは黒い、とても黒い雲だった
「オーキュペテーやケライノーを煩わしく思うかい?」と
彼が問いかけてきたことがあったので、私は彼女たちの名前を知っている
それまでは彼女たちに気付きもしなかった、今ははっきりと見えているのに)
オ
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