人魚・2 〜蝋燭〜   【小説】/北村 守通
 
まっていた私は、躊躇うことなくその物体が何であるかを確認するために進み出た。光は時々不安定に揺らぎながらも、その明るさだけは失うことなく、そして移動することもなく私の目の前に迫った。潮は私を思いとどまらそうと必死になったが、私は幾許かの戦慄を背中に感じながらも彼等、あるいは彼女等の好意に従わなかった。そしてそのことを後悔することになった。
 最初、私はそれが根掛かりでもして置き去りにされた憐れな電気浮きか何か、だと思っていた。しかし、形状を視覚によって識別するのに充分な距離まで達したとき、その想定が全くの希望的観測による誤りであったことを痛感せずにはいられなかった。

 思わず息を呑んだ。
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