透明宣言/木屋 亞万
 
は手元を離れてすぐに消え、一瞬の空白の後にキャッチャーミットに収まる
審判はホームベースとミットの合間で、幽かに見えた球筋から
ストライークと叫ぶ、ロージンの白煙だけが打者には見えた

ついに例の外国人選手の打順が訪れる、彼はにやにや笑っている
打席に入ってすぐに、バットの先でスタンドを指した、ホームラン宣言だった
一球目、この試合で始めてバットと球の当たる音がした
その球はどこかに消えてしまって、今でも見つからない
二球目、酔っ払い親父にファールボールが激突した
球は親父の禿げた頭に当たるまで、消えたままだったという話だ
三球目、を投げる前にチビの魔術師はタイムを取った

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