ひとのきかん/木屋 亞万
立たされたとき、栄耀(営養ともいう)が優先されるのは
より太くて日の当たる「別人」がいる方だった
神様がしばらくぶりに散歩に来ると人の木缶は
驚くほどに成長していた、「しばらく見ない間に大きくなってえ」と
神様は感慨にふけっていた、そして「しかしそこは窮屈でないかい」と尋ねた
缶詰を破裂させんばかりに成長した木の根が、地面に押し上げられ
硬さには自信のあるスチール缶も、所々綻び始めていた
根が押し上げられ弱ったせいか、はたまた寿命のせいなのか
ひとのきは空に近いところからその葉を黄色く萎れさせ
枯れていこうとしていた
その木は、神様が想像していた以上に色とりどりの枝葉をつけ
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