ひとのきかん/木屋 亞万
えた
何やら呪文を呟いた後、「さあ、始まりに備えるとしよう」といって
空の彼方へと帰っていった
それからぐるぐる時は流れ、
ひとてま掛けたその木から、「一つの人」という木(略して、ひとのき)が生まれた
発芽して最初に出た芽は双葉だった、それで
ひとのきは「男」と「女」に分かれる可能性を持つことになった
とはいえ、幹はしばらくの間は大して枝分かれしないので
ひとのきの中で男側と女側に、枝が分離していく兆しを見せたのは
春を十数回ほど跨いだ頃だったろう
とはいえ、真っ二つに裂けたまま育つ木はほとんどない
幹の最初の分岐点から枝葉は縦横無尽に広がっていく
それぞれ分岐路に立た
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