君の背中に追いつかない/秋桜優紀
くわからなかった。何故あの子はあんなに悲しそうに泣いているのだろうと、首を傾げてさえいたのだ。
でも、今ならわかる。彼女は走りたかった。他の子たちと一緒に思いっきり走って、立てなくなるくらいに疲れてみたかったのだ。
他の子と違う、他の子にはできることができない。それを誰が責めたわけでもない。それでも彼女は、他とは違う自分が堪らなく嫌だったのだ。「走りたい」。そんな小さな願いすら叶えられない自分の身体が邪魔で、憎くて、できることなら誰かと取り替えたくて仕方なかったのだ。
中学に上がってから、彼女の姿は全く見ていない。生きているのか、死んでいるのかさえも知らない。ああ、でもそうだ。確かにわからな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)