君の背中に追いつかない/秋桜優紀
が、授業内容がマラソンのときは、座ったままでにこにことこっちを見ている彼女を、少し羨ましく思ったこともあった。
あるとき、マラソンを走り終わってヘトヘトのとある男子が、皆にタイムを告げている彼女に向かって、そのことを実際に口にしたことがあった。無論、男子はその子を責めて言ったわけではない。ただ、軽口を叩いただけのことであったのだ。
彼女は泣いた。それも、大声で泣き喚いたわけではない。ただ静かに涙を零すだけ。本当の心の奥深くの悲しみとやりきれなさで、泣いた。実際、それに気付いたのは泣き出した女の子を見て大慌てだったその男子と、私くらいのものだっただろう。でも、そのときの私には彼女の気持ちがよくわ
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