三拍子が変拍子(耐えがたい悪臭のワルツ)/ホロウ・シカエルボク
 
出されたストラディバリウスに誰かの鼻が乗っかっていた
黒目が変な方を向いた女の子が小便を漏らした
もみの木のアクセサリーがカタカタと揺れた


おまえの恐怖の中におれがいる
鼻汁の貼り付いた赤子のような顔をしながら
おれの失意の中におまえがいる
すくすくと育った無脳症の女みたいな顔をしながら
何かの拍子にいきり立った坊さんが鼻血を吹き上げながら
死体になった奴から順番に犯っていく
もはや何のためか判らない経が
すっきりしない暗色の夜空へ飛んでゆく
そこだけ存在が抜け落ちたような灰色の痣に
仏の道から引き戻されたそれがとめどもなくぶちまけられる
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