三拍子が変拍子(耐えがたい悪臭のワルツ)/ホロウ・シカエルボク
 

カラスはとうとう我慢が出来なくなって
貴婦人の目を貫いてもみの木へ飛びあがる
「おまえらはみんな狂っているんだ」
そう叫びながら水晶体の破片を吐き出して
くちばしの先で器用にリードを外した


踊ろう、踊ろうじゃないか、時計の針はまだ少しも進んでいない
誰かがネジを巻き忘れたのかもしれない、だけどそんなこともうどうだっていいじゃないか
大事なことになんか関わったりしない
気にしないことばかり並べて
音の薄くなったワルツに身を任せていればよいのだ
踊ろうじゃないか!夜はまだ始まったばかりだ
「ありがとうございます!」黒目が変な方を向いた女の子が一声叫んで絶命した
きっと小便で体が冷えてしまったのだ
片目を失った貴婦人はバランスがとれずにくるくると回っている
ああおい、音楽が無くなってしまうぜ!
ラバーマスクの男は息が出来なくなって死んだ



時計の針は


とけいの

はり














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