蛸/亜樹
生まれたときから持った手足。
自覚をすれば
ようやく自分の飢えに気がつくも
壺の中で安らいで
もうドコにも行きたくないのです。
(だってこれ以上裂かれれば、今度は烏賊になるより他ない)
それで仕方なく自分の足を食う。
それは例えば道徳の刃でつくられた凝り固まって融通の利かない堅苦しい心。
それは例えば協調の刃でつくられたマニュアル化され変化のない一枚岩のつまらない心。
それは例えば個性の刃でつくられた向こう見ずで無責任な考えなしの心。
それは例えば信念の刃でつくられた暑苦しい正義を押し付けるあつかましい心。
それは例えば我儘の刃でつくられた無抵抗で貧弱で諦めることに慣
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