詩片H ?/土田
のがおれだった
アルマーニの香水はみるみるうちに剥がれていった
交差する視線をかいくぐってハルシオンの錠剤をひと粒歯で砕いた
千九百年前の世界の車窓がそこにあった
山手線のホームに並ぶニンゲンたちは皆同じに見えた
四月だというのにおれは暑かった
心頭滅却と一万回唱えても熱気はすこしも冷めなかった
ぽとぽとと拭くものは何もなく死にたくなった
いますぐに全裸で冷凍庫に保存されたかった
やがて何年後かに解凍され生きた天然記念物として崇められたかった
やがて酸性雨で汚れていく不動の偉人たちのように季節を黙って食べたかった
それか忘れ去られた流行のように場所をとる粗大ゴミのようなものと
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