執行猶予/ホロウ・シカエルボク
に届くことさえ出来なかったのだ
オーオー、アイデンティティは根本的に無力だ
暗闇で誇りを積み上げてみたところでそれがなんの役に立つのか
俺は小理屈をくっちゃべるだけのただの野良犬だ
なんとなく喋ることは出来ても得意なものは小便による陣地の確保だ
根元の濡れた電信柱以外に存在を匂わせるものが何も無い
ねえって、俺のこと覚えているかい
あんたと何度も食らいあったはずだぜ
あんなに悲鳴をあげて拒んでいたじゃないか
あんなに目を剥き出しにして俺の腕を食いちぎったじゃないか?
あんたの歯は、そうだよ、獣のように猛り狂っていた、そして朝日のように若々しかった
俺の血の味を覚えてい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)