執行猶予/ホロウ・シカエルボク
 
ような気がする
記憶はいつでも傷みの度合いで色合いを保つものさ
なあ俺確かにあんたに会ったことがあった
どこだかまでは思い出せないけど確かにあんたに会ったことがあった
だけどどんなふうに話したのかまるで覚えてないんだ
俺の心の中にゃずいぶん前から他人が存在しないからさ
悪いね、だけど本気で謝る気なんかやっぱり毛頭無いんだ


何もない午後は眠い
睡魔にうながされながら白昼夢を見る
さようならという言葉をたくさん投げつけられる夢
隠したものがたくさん暴かれる夢
すべてのよりどころが皮を剥ぐように奪われてゆく夢
助けて、助けてと大事なものたちが泣いた
だけど俺はその身に届
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