チェーン/オイタル
 
ごのことを思い出しかけながら、飛び散る壁や天井の破片を眉間に受けて自分が命を失うこととなる。泣くべき母親もいない少年が命を失ってしばらくした頃、アフリカのサバンナでは水牛のジョンが、前日の昼過ぎにあごを前足に乗せて、青空を山陰へと流れる雲を久しく眺めていたライオンのイオンにおのれのあごを噛み砕かれておしまいの痙攣を終えた。
 花は、花びらを白く夜へと重ねていく。
〇九年一月十二日、五時十五分。
 ビールの空き缶が支えを失ってゆっくりとテーブルの下へと転げ落ちていく途中、少年の額を打ち付けた瓦礫はまだ少年の足元にうずくまったままで世界中に響く向きのない無数の声をじっと耐えている。
 明け方、
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