チェーン/オイタル
 
 二〇〇九年一月十一日、二十三時三十二分。
 縁まで冴え渡る空の下、画像の荒れたブラウン管では懐かしいアメリカの俳優が、光る川辺でギターを弾きながら自分も知らなかった自分の娘にひどく悪態をつかれ涙ながらに抱き合って頬ずりをしていたが、私はリモコンのスイッチを親指で軽く飛ばして黄色い湯船に向かう。
 明日も仕事が早い。五分後、ちょうど私が首筋をタオルで拭いているとき、迫撃砲弾が窓ガラスを割り少年の右の耳元を掠めて正面の壁に着弾する。少年はちょうど一時間前、東に三軒はなれた石の家に住む二歳年上の少年に女友達のことであごを殴られ「死んじまえ。」とつばを吐いたが、私が首筋を拭く四秒後には女友達のあごの
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