クロスレット・シルバー  /いすず
 
んをなくしたわたしが悲しいんだって」
とめどなくしずくはながれていた。羽鳥の髪を千尋は梳いた。さらさらのこぼれ落ちる黒髪が、ゆびのあいだをすりぬけていった。すすり泣きが聞こえた。
崩れ落ちそうな羽鳥を必死で抱きとめていると、羽鳥がささやくように言った。
「きっとね、あなたが今わたしを必要としてくれたから、今つよくいれるんだ。だから、きっとひとりじゃないと思えるんだ。ひとってみな、神さまの子なんでしょ? 昔、日曜学校でならったの。千尋もそう思う?」
千尋は羽鳥の黒髪に唇を押し当てた。羽鳥はなきそうになりながらじっとしていた。
「ひとは、神に似せてつくられたんだよ」
千尋は思いを込めて呟い
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