クロスレット・シルバー /いすず
呟いた。
「じゃあ、お兄ちゃんも、ジョゼフィンも、おじいさんも、みんな、神さまに戻るんだね」
「きっとそうだよ」
羽鳥はあのときの、泣き腫らした眼をしていた。千尋は羽鳥の首のクルスを一緒に握らせた。ふくよかな手と自分の荒れた手を握り合わせると、なぜだか馬小屋のイエスを訪れた三賢人のことが思い出されるのだった。
今、僕に力をください。ひとをすくえる力を。ここで立ち直りつつある羽鳥を、どうぞ見守りください。
羽鳥がうすい目蓋を閉じていた。千尋は祈った。ゆびがふるえそうになった。寒さのせいではなかった。今、できることとしたら。
「羽鳥、一緒に祈ろう。ずっとずっとこの雪が深くなるまで」
羽鳥
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