「オルゴール」 (リレー小説・三題噺)/佐藤犀星
んだろう。あれほど弾んでうるさかった胸が、音を立てて冷えていく。
「初めて会ったときから、僕はきみを見ていた。僕を養ってくれたきみのおじい様へのご恩返しのつもりだったのに。気がつけばきみと過ごす時が、あのオルゴールの流れる時間だけを待ち望む自分がいた。恥ずかしいほどに、もう僕はきみのことばかりを考えていた。だから、驚いたんだ。親友だと紹介された彼女が、あまりにもきみに似ていてから。いや、顔はまるで違う。表情もそうだ。
だけど、引き離された双子のように、彼女はきみだった。下唇を噛んだり、前髪をいじったりする癖や、ちょっとした仕草だった。だからと言ってしまうのはあまりにもひどい。きみにも彼
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