「オルゴール」 (リレー小説・三題噺)/佐藤犀星
 
。そして、紙が見えた。私は直感めいたものに突き動かされて、それを引っぱり出した。
「手紙……?」
 あの人らしい、小さく折り畳まれた便箋は間違えようがない。あの人が字を練習したいと言うので、手紙を交換しようと私がプレゼントしたものだ。
 
 息が苦しい。胸が熱い。どうして気づかなかったんだろう。きちんと別れを言えなかったあの人の、最後の言葉かもしれないのに!私はあわてて読み始めた。
「この手紙を君が読んでいるとき、僕はこの世にいないだろう。ごめんと何度言ってもきっとたりない。でも言わせてほしい。こうなってしまったのは僕のせいだ」
 胸が騒ぐ。なんだろう。あの人は何を私に伝えたかったんだ
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