「オルゴール」 (リレー小説・三題噺)/佐藤犀星
人が苦悩の末に選んだこと。彼が倒れていたあの日に、本当は何があったのか。
「僕は彼女を呼び出した。これまでと同じように、もうこんなことはやめてほしい、と繰り返した。だけれど、これまでと同じように、わかってもらえるとは思っていなかった」
そして手紙には、続きがあった。おそらく実際にあったこと。書斎のバルコニーから落ちたあの人が、最後に誰と話していたのか。
どうして落ちねばならなかったのか。どうしてあの人がいなくなったのか。それらすべてが記されていた。
「そうなの」
「そうだったのね」
柱時計の音が遠くに聞こえる。時を刻
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