かあさん/小原あき
出した詩には
「ぬ」はいなかった
きっとこれは
誰かの家出した詩だろう
少しだけほっとした
散歩から帰ると
玄関に「ぴ」が落ちていた
カサカサと
枯葉みたいに
風に乗って飛んでいった
風が急に温もりを失くした
雪の破片が
ぐるぐると空を回っている
千切ってしまった
白紙が飛んでいるのかと
一瞬、焦った
紙吹雪を見ていると
世界がわたしを軸にして
器用に回りだし
まともに立っていられなかった
部屋に転がり込むと
ストーブで手を温めた
左の肩に
「か」が引っ掛かっていた
新しい紙を取り出して
「あ
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